こんにちは。
「史上最強のCEO イーロン・マスクの戦い」という本を読みました。
どういう本か?
ペイパル、スペースX、テスラ・モーターズといった企業を率いるシリアル・アントレプレナー(連続起業家)イーロン・マスクの半生記。主にスタンフォード大学を2日で退学してからの彼の奮闘が描かれています。経歴を見ると、宇宙事業や電気自動車と多分野で成功を繰り返したように見えるイーロン・マスク。しかし、その過程は決して順風満帆ではありませんでした。多くの失敗に直面しつつも、それを乗り越えていく物語が描かれています。
特にスペースXを創業してから初めてロケットを打ち上げるまでに何度も失敗しながら、最後は成功させるというエピソードがとても印象に残ったのでご紹介します。
「ファルコン1」の挑戦
X. Com社を成功させたマスクは2002年に宇宙開発事業を手掛ける会社スペースXを起業しました。当時宇宙開発はNASAなどが国家事業として行うもので、民間の企業が参入しても成功するはずがないと言われていました。しかしマスクはそんな周りの意見を気にせず、「ファルコン1」という無人ロケットを2004年に完成させ、同年11月25日に打ち上げると宣言しました。
しかしここから数々の困難がマスクに襲いかかります。
2度の発射延期
まずマスクは2度のロケット発射延期に追い込まれます。1度目は2004年11月。ファルコン1が発射台に乗った後、まさに打ち上げる直前に、燃料タンクとメインエンジンのコンピュータに問題があることが発覚したのです。結局打ち上げは1ヵ月後の12月19日に延期されました。
マスクとエンジニアたちはこの問題を修正し、1ヶ月後の12月19日に再び打ち上げを試みました。しかし再び打ち上げの直前で燃料タンクの構造に問題があることが発覚。打ち上げは再延期となりました。2度目の発射延期です。
4回の挑戦
1度目の挑戦
2度も打ち上げ中止になれば精神的にもかなり堪えます。マスクも「逃げ出したいような思い」にかられていたそうです。彼は再び1ヵ月後に打ち上げると発表しました。しかし1ヵ月後になっても打ち上げることはできず、最終的に打ち上げが行われたのは2度目の打ち上げ中止から3ヵ月以上。
2006年3月25日でした。
今度は打ち上げ前のチェックもクリアし、「ファルコン1」が初めて打ち上げられました。
イーロンも技術者たちも「今度こそ、行けるぞ!」と思った。しかし、次の瞬間……「ファルコン1」の断熱材が落下した。さらに数秒後、エンジンノズルの噴射方向がなぜか急激に変わってロケット姿勢が崩れ、打上げから約40秒後、「ファルコン1」は美しい南太平洋に吸い込まれていった。かくして、スペースX社の技術者たちの必死の努力と夢を満載した「ファルコン1」は、巨額の開発費とともに木っ端微塵、海の藻屑となった。
打ち上げることはできたものの、なんと機体が落下し木っ端微塵に。
「民間企業がロケットを打ち上げるのは無理だ」という声が上がり始めます。通常の経営者ならこの辺で諦めてしまうでしょう。しかしマスクとスペースXのエンジニアたちは「ファルコン1」の2号機を作り始めます。
2度目の挑戦
2号機が完成したのは初の打ち上げから約1年たった2007年。3月20日に3度の延期・失敗を経て改良された「ファルコン1」の2号機が打ち上げられました。2号機は第一段エンジンの切り離しにも成功したものの、第二エンジンが予定よりも早く停止。結果的に計画した軌道に到達することができず打ち上げは失敗に終わります。
3度目の挑戦
3度目の挑戦は2度目の打ち上げ失敗から1年半後の2008年8月に行われました。今度こそ成功すると思われていたものの、なんとロケットの1段目と2段目の分離で失敗。3度目の打上げ失敗となってしまいます。4度目の挑戦
4度目の挑戦は前回の失敗から1ヵ月経った2008年9月に行われました。好奇心と期待をないまぜにした世界中の宇宙開発関係者の目は、南太平洋のマーシャル諸島に浮かぶオメレク島のロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場の発射台に備え付けられた、全長21 m、総重量39トンのロケット「ファルコン1」に集まっていた。
9月28日午前11時15分、「ファルコン1」は轟音と共に真っ青な天空めがけ上昇していった。打ち上げから3分弱で一段目を切り離し、約10分後には、ペイロード(搭載物)を予定の軌道へ投入することに見事成功した。
4度目の挑戦でようやく打ち上げが成功しました。
マスクは当時を振り返って「もし4度目も失敗していたらスペースXはなかった」と述べていて、まさに最後の最後に成功を果たしたのです。
困難をどのように乗り越えたのか
この打ち上げ延期2回、打ち上げ失敗3回という困難をどのように乗り越え、民間企業初のロケット打ち上げ成功という快挙を成し遂げたのでしょうか。これには2つの要因があると言われています。一つはマスクの楽観的な姿勢です。2度目の打ち上げ失敗の際にマスクはマスコミに向かって、
と述べ部下たちを激励したそうです。
リーダーが落ち込んでいては組織も一緒に沈んでしまいます。困難な時こそリーダーがチームを引っ張らなければならないのです。
もう一つはマスクに優れたリーダーの素質が備わっていたということです。特にそれが現れたのが2度目の打ち上げ失敗のあと。この打ち上げは予定の軌道に乗れず、第1段の回収にも失敗しました。しかし、十分なデータ収集ができたとしてマスクは「部分的な成功」と発表したのです。
私たちは何かに失敗した時、その失敗に注目してしまいがちです。しかしその失敗の中にある小さな成功を見つけ、取り出し、それを部下や周りの人間に気づかせてあげる能力が優れたリーダーに不可欠なものです。
ノーベル賞を2度受賞したキュリー夫人が「希望は、人を成功に導く宗教である」と言ったように、困難の中にこそ希望の火を灯してみせることがリーダーの大切な役割だ。
マスクにはこの「困難の中に希望の火を灯す」能力が備わっていたため、何度失敗してもエンジニアたちは諦めずにマスクに付いて行ったのでしょう。
最後に
アイアンマンのモデルになったことでも知られるイーロン・マスク。どこか超人的なイメージが先行しているような部分もあります。しかし、この「史上最強のCEO イーロン・マスクの戦い」を読んでマスクも一個一個の努力を日々積み重ねているということに気づきました。起業家を目指している人はもちろん、「成長したい」「自分を変えたい」と思っている人にオススメの1冊です。